特定技能制度により、国内の人手不足を補うために外国人労働者の受け入れが進んでいます。ただし、雇用形態には制限があり、多くの業種では直接雇用が原則とされています。その中で、農業と漁業に限っては派遣形態での雇用が例外的に認められており、派遣先・派遣元の事業者には一定の条件が課されています。
本記事では、特定技能外国人を派遣で雇用する際の制度上のルールと、事業者が守るべき要件、費用やリスクなどをわかりやすく整理しています。
特定技能外国人の派遣は農業・漁業でのみ認められる
特定技能制度では、外国人労働者の雇用は基本的に直接雇用と定められていますが、例外として農業と漁業の分野では派遣形態が許可されています。
派遣が許可されている理由
農業や漁業では、作業時期に大きな繁閑差があるため、短期間での労働力補充が必要とされます。派遣制度を導入することで、地域や時期に応じた柔軟な人材配置が可能となり、事業の継続性を確保しやすくなるためです。
特定技能外国人の受け入れ人数には分野別の上限がある
外国人を特定技能で受け入れる場合、分野ごとに上限人数が設けられており、農業・漁業分野もその対象です。
農業・漁業分野の受け入れ上限の目安
- 農業:約36,000人
- 漁業:約6,000人
これらの枠は国の方針により数年ごとに見直されることがあり、事業者は最新の情報を確認することが重要です。受け入れ可能な上限を超えると雇用が認められない場合もあるため、制度運用には注意が必要です。
派遣先企業が満たすべき法的条件と要件
特定技能外国人を派遣として受け入れるには、派遣先企業が制度上の厳格な条件をクリアする必要があります。
派遣先企業に求められる主な条件
- 労働基準法・社会保険・税務関連の法令を遵守している
- 過去1年以内に、同様の業務に従事していた労働者を解雇していない
- 外国人労働者の失踪者・行方不明者を出していない
- 刑罰や罰金刑の処分歴がない
- 派遣元と同一地域または、日帰りが可能な範囲で就業させている
これらの条件は、外国人労働者の就業環境を適切に保つために必要不可欠です。特に、労働環境や法令遵守に問題がある場合は派遣の許可は下りません。
派遣元となるための事業者条件
派遣元として特定技能外国人を扱うには、事業者側も厳格な資格と条件を満たす必要があります。
派遣元として必要な前提条件
- 農業・漁業関連の事業を行っている
- 地方公共団体や農業・漁業関係者が過半数出資している
- 地方公共団体や関係者が経営に実質的に関与している
派遣元の具体例
- 農業協同組合
- 農業関連の事業協同組合
- 漁業協同組合や水産業に関わる組合連合会など
これらの法人格があり、かつ制度に適合した事業者のみが、特定技能外国人を派遣として扱うことができます。
違法雇用は不法就労助長罪に該当するリスクがある
制度を理解せずに誤った運用をすると、知らないうちに法令違反となる可能性があります。中でも注意が必要なのが「不法就労助長罪」です。
違反として見なされる行為
- 在留資格のない外国人を雇用
- 在留資格はあるが、就労が認められていない業種で働かせる
- 派遣が認められていない分野での就労を指示
これらの行為は、故意・過失にかかわらず処罰対象となることがあるため、制度の内容を正確に理解しておく必要があります。
特定技能外国人の派遣にかかる費用の相場
特定技能で外国人を派遣雇用する場合、採用から支援、生活費に至るまでさまざまなコストが発生します。
主な費用の内訳
- 採用関連費用:人材紹介手数料(30万~60万円)
- 在留資格関連費用:申請費用・支援費用(合計20万~30万円)
- 登録支援機関費用:月額2万~4万円
- 渡航費用・生活支援:渡航費(5万~10万円)+住居・福利厚生など
事業規模や契約内容により費用は変動するため、雇用前に複数機関から見積もりを取ることが推奨されます。
よくある質問と運用上の注意点
派遣元のみ協議会加盟が必要
派遣形態での雇用において、協議会加盟の義務があるのは派遣元のみであり、派遣先企業には義務はありません。
派遣可能な期間は最長3年
通常の派遣同様、同一の外国人を同じ派遣先に派遣できる期間は最長3年です。特定技能の在留期間が5年であっても例外はなく、派遣先の変更が必要になります。
派遣先管理台帳の作成義務
派遣先企業は、派遣された外国人労働者の勤務状況を記録する「派遣先管理台帳」を作成し、3年間保存する必要があります。帳簿の不備があると、後の審査で不利になることもあるため注意が必要です。
特定技能の派遣制度を正しく活用するために
農業・漁業の分野において特定技能外国人を派遣で雇用することは可能ですが、それには厳格な制度理解と適正な運用が求められます。派遣先・派遣元それぞれが法律を守り、健全な労働環境を整えてこそ、外国人労働者の定着や業務効率の向上につながります。
今後の人材戦略として、特定技能制度の派遣活用を検討する際は、専門機関への相談や最新の制度動向の確認を怠らないようにしましょう。適正な手続きと準備が、企業の信頼性向上にも直結します。


