特定技能外国人の自社支援要件と運用方法

近年、特定技能外国人の受け入れを進める企業が増えるなかで、自社で支援を行う「自社支援」という方法に注目が集まっています。自社支援は、支援内容を柔軟に運用できる点やコスト削減が期待できる点でメリットがありますが、その反面、実施には厳格な条件や文書管理、支援体制の整備が求められます。

本記事では、自社支援を行うために企業が満たすべき要件、必要な準備、実際の支援手続きの流れについて詳しく解説します。

特定技能外国人の支援方法は自社対応も可能

特定技能制度における外国人材の支援は、登録支援機関に委託する方法だけでなく、企業が自ら実施することも認められています。自社支援を選ぶことで、社内での一貫したサポート体制が築け、外国人材に対して柔軟かつ迅速な対応が可能となります。

ただし、自社支援には国が定めた複数の要件があり、体制構築には十分な準備が必要です。要件を満たしていない場合は、登録支援機関への委託を選ぶことになります。

特定技能外国人の支援に必要な義務的支援内容とは

企業が特定技能外国人を受け入れる際には、法律で定められた「義務的支援」を行う必要があります。これは外国人材が日本で安心して生活・労働できるようにするための最低限のサポートです。

義務的支援の主な内容

  • 事前ガイダンスの実施
  • 出入国時の送迎
  • 住居確保に関する支援
  • 生活オリエンテーションの実施
  • 公的手続きへの同行
  • 日本語学習機会の提供
  • 日常生活や職場での相談対応
  • 日本人との交流の促進
  • 転職支援(受入れ困難時)
  • 3か月に1度以上の定期面談

これらはすべて確実に実施しなければならず、実施状況の記録・保存も義務となっています。

自社支援に必要な6つの条件を詳しく解説

自社で特定技能外国人を支援するには、以下の条件をすべて満たす必要があります。これらは、支援の信頼性と安全性を確保するために設けられています。

受け入れ実績があること

  • 過去2年以内に中長期在留者(技能実習生や留学生など)を受け入れた実績が必要
  • 雇用実績だけでなく、生活支援や労務管理の実施も含まれます

この経験がない場合は、まず登録支援機関に委託して実績を積むことが求められます。

言語支援体制の整備

  • 外国人材が十分に理解できる言語で支援が可能な体制を構築
  • 通訳スタッフの配置、翻訳資料の準備などが含まれます
  • 専門用語や生活に関する説明は母国語対応が望ましい

言語面での支援が不十分だと、トラブルや誤解が生じるリスクが高まります。

支援記録の作成と保管が可能

  • 面談記録、相談対応記録、支援計画書などの作成が義務付けられています
  • 文書は支援終了後も1年間以上の保管が必要
  • 管理庁からの提出要請に対応できる体制が必要です

記録を徹底することで、支援の透明性と法令順守が担保されます。

支援の中立性を確保できる体制

  • 支援担当者は外国人材の直属の上司以外から選任する
  • 公平な立場での対応が求められるため、相談窓口の設置が推奨されます
  • 相談内容や対応経過もすべて記録し、客観性を保つ必要があります

公平な体制が整っていない場合、トラブルの原因となる可能性があります。

義務的支援の不履行がないこと

  • 計画された支援を確実に実施することが前提
  • 不履行が発覚すると、指導や在留資格取り消しにつながることもあります
  • 定期的な進捗チェックや内部監査を実施すると予防につながります

支援の確実な履行は、企業としての信頼性にも直結します。

定期的な面談の実施

  • 3か月に1度以上、外国人材との面談を行い、生活や労働状況を把握
  • 面談結果は記録し、必要に応じて支援内容に反映させる必要があります

この面談を通じて、早期に問題を把握し、解決策を講じることが可能になります。

支援責任者・支援担当者の要件と役割

自社支援では、支援業務を担う人材の選定が重要です。支援責任者と支援担当者の配置が義務付けられています。

選任時に求められる要件

  • 外国人の労務管理または生活支援に関する2年以内の経験があること
  • 外国人との意思疎通が可能な語学力を有すること
  • 出入国在留管理庁の指定する研修を修了していること
  • 関連法令および制度に関する知識を有していること

この条件を満たす人材がいなければ、自社支援の実施は認められません。

自社支援の具体的な手続きと実施フロー

実際に自社支援を行うには、準備から運用まで複数のステップを踏む必要があります。以下に一般的な流れを整理します。

自社支援のステップ

  1. 体制整備:支援責任者・担当者の選任、語学対応体制の構築
  2. 支援計画の作成:支援内容を明文化し、在留資格申請時に提出
  3. 必要書類の準備・提出:所属機関概要書などを作成し管理庁に提出
  4. 支援の実施:計画に基づき住居支援やオリエンテーションを実行
  5. 支援記録の作成・保管:各支援内容を記録し、法定期間保管
  6. 改善と見直し:定期的に支援体制を見直し、必要に応じて改善を図る

支援計画の質と実行力が、特定技能外国人の職場定着に大きく影響します。

自社支援と登録支援機関への委託の違い

どちらの支援方法を選ぶかは、企業の体制や経験に大きく左右されます。それぞれの特徴を比較してみましょう。

比較項目自社支援委託支援
コスト初期は高いが長期的には削減可能月額2〜3万円程度の継続費用
業務負担社内体制の整備・書類作成が必要支援業務を外部に任せて軽減
柔軟性直接対応できるため柔軟性が高い外部との調整が必要で時間がかかる
専門性ノウハウ蓄積が前提となる経験豊富な支援が受けられる
管理体制一貫した社内管理が可能管理は外部主導で制限される

特定技能外国人の受け入れを成功させるために

自社支援は、しっかりと体制が整えばコストパフォーマンスや対応の柔軟性で大きなメリットがあります。しかし、初期準備や運用に多くのリソースを割かなければならないため、経験の少ない企業には負担が大きくなりがちです。

まずは登録支援機関の活用から始め、実績やノウハウを社内に蓄積したうえで、自社支援への移行を検討するという段階的な方法も有効です。企業の状況に応じた適切な支援方法を選び、安定した雇用と職場環境づくりを目指しましょう。