外国人労働者の受け入れ制度である「特定技能」のうち、建設分野に特化した「特定技能・建設」は、慢性的な人材不足に悩む業界において重要な対策のひとつです。
本記事では、特定技能「建設」の概要、対象職種、取得ルート、企業側の受入条件、試験内容、採用までの流れ、必要な費用などを網羅的に整理し、建設業界での外国人材活用を検討する企業にとっての基礎知識を解説します。
特定技能「建設」とは何か?
外国人が従事可能な建設業務の在留資格
特定技能「建設」は、外国人が建設業に従事するために必要な在留資格で、建築や配管工事、電気通信工事などの分野が対象です。この制度は、日本の建設業界における深刻な人手不足を背景に導入されました。
- 雇用形態:直接雇用(派遣不可)
- 報酬:日本人と同等以上
- 受け入れ人数上限:最大40,000人(5年間)
企業は常勤職員数を上限として外国人の採用が可能です。たとえば、常勤社員10名の企業では、最大10名まで受け入れが可能です。
制度創設の背景と課題
建設業界の高齢化と若年層離れが深刻
建設業界は他産業と比較して高齢化が進行しており、若年層の入職者も減少傾向にあります。その結果、慢性的な労働力不足に直面しています。
背景の要因
- 高齢化による労働人口の減少
- 若者に敬遠されがちな労働環境
- 高度な技能継承の断絶
これらの問題を受け、新たな労働力確保策として特定技能「建設」が創設されました。
対象となる職種と業務区分
区分ごとの具体的な対象職種
特定技能「建設」は以下の3つの業務区分に分類され、それぞれ対象職種が決まっています。
土木区分の職種例
- 型枠施工
- 鉄筋施工
- コンクリート圧送
- トンネル推進工
- 土工 など
建築区分の職種例
- 左官
- 屋根ふき
- 内装仕上げ
- 建築大工
- 表装 など
ライフライン・設備区分の職種例
- 建設機械施工
- 電気通信工事
- ガス管配管工事
- 水道設備工事 など
企業は、自社の人材ニーズと制度で許可された職種が一致しているか確認する必要があります。
1号と2号の違いと取得条件
在留期間・技能水準・家族帯同の違い
| 区分 | 特定技能1号 | 特定技能2号 |
|---|---|---|
| 在留期間 | 最大5年(更新制) | 無期限更新可 |
| 技能水準 | 一定の技能 | 熟練した技能 |
| 家族帯同 | 不可 | 条件を満たせば可能 |
| 日本語試験 | 必須 | 原則不要 |
| 支援義務 | 企業に義務あり | 不要 |
2号はより高度な技能が必要とされるため、外国人労働者の待遇も手厚くなります。
特定技能「建設」1号の取得方法
主に2つのルートがある
ルート①:試験による取得
- 技能試験(学科+実技)の合格が必要
- 日本語試験(JLPT N4以上)または日本語基礎テストの合格も必須
ルート②:技能実習からの移行
- 技能実習2号・3号の修了者は、試験が免除され1号へ移行可能
- 技能実習と組み合わせれば最長10年の就労が可能
特定技能「建設」2号の取得要件
1号からの移行が前提
- 技能検定1級などの試験に合格
- 班長としての実務経験
- 業務区分ごとに定められた実務年数
2号の取得には高いハードルがあるものの、長期雇用や家族帯同が可能になる点で魅力的です。
特定技能評価試験の内容
学科と実技の2つの試験形式
【学科試験の概要】
- 試験時間:60分
- 出題形式:選択式・○×形式
- 合格基準:得点の65%以上
【実技試験】
- 職種ごとに内容が異なる
- 実際の作業能力が問われる
企業側の受け入れ条件
採用にあたり満たすべき5つの条件
- 建設業許可の取得
- 国土交通省の「建設特定技能受入計画」認定
- 建設技能人材機構(JAC)への加入
- 建設キャリアアップシステムへの登録
- 支援計画の策定と実行
義務的支援10項目
- 出入国の送迎
- 住居確保支援
- 日本語学習支援
- 生活オリエンテーション
- 苦情対応
- 転職支援 など
支援業務は企業が自ら行うか、登録支援機関へ委託可能です。
採用の流れと必要な手続き
国内・国外からの採用で異なるフロー
【共通のステップ】
- 建設業許可取得
- キャリアアップシステム登録
- JAC加入
- 雇用契約の締結
- 受け入れ計画の認定申請
- 支援計画の策定
- 入管への在留資格申請
- 就労開始
国外から採用する場合は、査証取得や在外公館での手続きが追加されます。
採用にかかる費用の目安
採用1人あたりの費用総額
| 項目 | 費用相場 |
|---|---|
| JAC年会費 | 24万円〜 |
| 受け入れ負担金 | 年額15万〜24万円 |
| キャリアアップ登録料 | ~24万円(事業者)/2,500円〜(技能者) |
| 外国人紹介料 | 10万〜60万円/人 |
| 入管申請代行 | 10万〜20万円/申請 |
| 国交省申請 | 4万〜8万円/件 |
| 支援委託料 | 月1.5万〜3万円/人 |
概算合計:65万〜170万円/人
まとめ:建設業の人手不足解消に有効な制度
特定技能「建設」は、高齢化や若年層離れで人材確保が困難な建設業において、外国人労働力の受け入れを可能にする制度です。制度の利用には、企業側も多くの条件をクリアする必要がありますが、受け入れが成功すれば長期的な人材確保が可能となります。
導入のポイント
- 制度内容と対象職種の理解
- 受け入れ体制の構築
- 費用面の事前準備
安定した労働力確保の手段として、特定技能「建設」の制度を活用することは、今後ますます重要になるでしょう。


