造船・舶用工業分野では、国内人材の確保が年々難しくなっており、外国人労働者の活用が現実的な解決策として注目されています。特定技能制度は、即戦力として働ける技能を持つ外国人の受け入れを可能にする制度であり、制度の理解と適切な運用により、人手不足を補いながら安定した業務運営を実現できます。
本記事では、制度の概要から就業可能な業務内容、企業の受け入れ要件、在留資格取得の条件、採用までの流れと費用までを体系的に整理しています。
特定技能制度の基本情報
制度の目的と対象業種
特定技能制度は、日本国内で人材確保が困難な14業種に対して、即戦力となる外国人材の受け入れを認める仕組みです。造船・舶用工業も対象業種のひとつで、技術力のある外国人を現場に迎えることができます。
在留資格の種類
- 特定技能1号:基礎的な業務に従事。最長5年の在留期間。家族の帯同不可。
- 特定技能2号:熟練技能者として、監督・指導業務も担う。在留期間無制限。家族の帯同可。
造船・舶用工業分野の人材不足の実態
この分野では、技術継承が難航し、若年層の就業者も少ないため、今後さらに人手不足が深刻化することが見込まれています。地方部では特に人材確保が困難で、業務を維持するために外国人材への依存度が高まっています。
業務区分ごとの人手不足状況
各業務で高い求人倍率が続いており、国内労働力だけでは補えない状況です。
- 溶接:熟練者不足が顕著
- 塗装:重労働で敬遠されがち
- 鉄工・仕上げ:機械操作と技術が必要
- 電気機器組立:電子制御知識が必要
特定技能で就業可能な業務内容
就業できる主な作業区分
特定技能を取得すると、以下の業務に従事することが可能です。
| 業務区分 | 主な業務内容 |
|---|---|
| 溶接 | 厚板の接合、構造部の強度確保 |
| 塗装 | 船体の塗装・防錆作業 |
| 鉄工 | 鉄材の切断・加工・組立 |
| 仕上げ | 機械部品の調整・取り付け |
| 機械加工 | 精密部品の切削加工 |
| 電気機器組立 | 配線、機器の取り付け・調整 |
これらの業務は、日本人と同等の基準で従事することが求められ、簡易作業のみを任せることはできません。
企業側が満たすべき条件
必要な制度的手続き
企業が特定技能外国人を受け入れるためには、以下の手続きが必要です。
- 協議会への加入:造船・舶用工業分野特定技能協議会に加入
- 事業者認定の取得:国土交通省からの認定が必要
- 支援体制の整備:職場・生活支援を義務的に実施
義務的支援の内容
企業または登録支援機関による支援は、次のような内容を含みます。
- 入出国時の送迎
- 住居や生活インフラの確保支援
- 公的手続きの補助
- 日本語学習の機会提供
- 定期的な面談とフォローアップ
支援業務の一部または全部を登録支援機関に委託することで、企業側の負担を軽減することができます。
在留資格を取得するための要件
特定技能1号の取得方法
- 試験合格ルート
・造船・舶用工業分野の技能評価試験に合格
・日本語能力試験(N4以上)または日本語基礎テストに合格 - 技能実習ルート
・技能実習2号を造船・舶用工業で修了した者は試験免除
特定技能2号の取得条件
溶接分野に限定され、以下が求められます。
- 技能検定1級または2号評価試験合格
- 管理監督業務の実務経験2年以上
- 高度な判断力とコミュニケーション能力
特定技能試験の内容
試験の構成と合格基準
- 学科試験:30問、〇×形式、60分、正答率60%以上で合格
- 実技試験:現場実習形式、作業の正確性や仕上がりで評価
実技に関しては、日頃から現場で作業している者や専門訓練を受けた者が有利です。試験は原則日本語で行われ、ふりがな付きで読みやすく工夫されています。
採用までのステップと期間
採用プロセスの流れ
採用の手続きは、在留資格の有無で以下のように異なります。
国内在留者の場合
- 技能試験または実習2号の修了
- 雇用契約の締結
- 在留資格変更許可申請
- 義務的支援の実施
- 就労開始
海外在住者の場合
- 雇用契約締結
- 在留資格認定証明書の申請・交付
- ビザ取得・入国
- 義務的支援の実施
- 就労開始
全体の流れとしては、採用決定から就労開始までおよそ4~6か月を見込む必要があります。
採用にかかる費用の目安
採用にあたり、以下のような費用が発生します。
- 送り出し機関手数料:国によって差異あり
- 人材紹介手数料:年収の10~30%程度
- 在留資格申請代行費用:書類作成など外注時に発生
費用は、出身国・人材紹介会社・登録支援機関によって大きく変動するため、事前に見積もりをとることが重要です。
外国人材の雇用は業界維持の鍵
造船・舶用工業の維持・発展には、特定技能外国人の受け入れが現実的な選択肢です。制度の活用によって、慢性的な人手不足を補いながら、継続的な事業運営が可能になります。
適切な採用手順と支援体制を整えれば、外国人材は企業にとって重要な戦力になります。長期的な視点で制度を理解し、実務に即した運用を行うことが成功のポイントです。


