特定技能と外国人雇用の制度改正と今後の動向

2024年は特定技能制度や外国人雇用に関する制度改革が相次ぎ、受け入れ分野の拡大、試験制度の見直し、新しい在留制度の創設など、大きな転換点を迎えた年となりました。

本記事では、特定技能制度を中心に、実務に関わる重要な変更点を視覚的に整理し、今後の対応に役立つ情報をまとめています。

技能実習制度の問題と特定技能への移行拡大

技能実習制度では原則転職が認められていないため、劣悪な職場環境に置かれた外国人労働者が失踪するケースが後を絶ちません。この制度の限界から、より柔軟な就労が可能な特定技能への移行希望者が増加しています。

実務上のポイント

  • 転籍は「やむを得ない事情」に限られるが、判断基準が曖昧だった
  • 出入国在留管理庁が基準明確化に向けて動いている
  • 特定技能への変更希望者が増加傾向

介護福祉士国家試験の再受験制度が変更

介護分野では人材不足が深刻化する中、国家試験制度の柔軟化が進んでいます。2025年度からは試験が3つの分野に分かれ、不合格となった分野だけを再受験できるようになります。

変更点と影響

  • 外国人受験者の負担軽減により、合格の可能性が向上
  • 再挑戦しやすい仕組みにより人材確保が促進
  • 高齢化社会に向けて介護人材の裾野が広がる

食料品スーパーマーケットでも特定技能外国人の受け入れが可能に

飲食料品製造業の対象事業所に、一定条件を満たしたスーパーマーケットも追加されました。これにより、就業可能な業態が広がり、現場での人手不足解消につながります。

追加条件の詳細

  • 対象:青果加工、鮮魚加工、ベーカリー、惣菜製造などを行う店舗
  • 販売業務は不可。業務内容は製造業に限定
  • 協議会加入時には「販売業務に従事させない」旨の誓約が必要

円安が特定技能外国人の生活に与える影響

円安の進行により、外国人労働者の実質収入が目減りし、生活や仕送りに大きな影響が出ています。労働者が金銭面での不安を感じており、雇用側の対応が求められています。

現場で起きている変化

  • 為替の影響で仕送り額が減少
  • 日本での生活コストは変わらないため、生活水準が下がる
  • 金銭・社会制度に関する相談ニーズが急増
  • 一方で、特定技能在留者数は前年より大幅に増加

特定技能2号の分野拡大と受け入れ状況

これまで建設と造船の2分野に限定されていた特定技能2号が、12分野に拡大されました。これにより、長期的な就労と家族帯同が可能な分野が増え、定着率の向上が期待されます。

制度改正の概要

  • 特定技能2号は在留期間に制限がなく、家族の帯同が可能
  • 製造業や農業など幅広い分野が対象に追加
  • 現時点では在留者数がまだ少ないため、普及に時間がかかる見込み

訪問介護サービスへの特定技能外国人の活用検討

訪問介護分野でも、特定技能外国人の活用が検討され始めました。従来は資格保有者に限定されていましたが、現場の人材不足を受けて、制度の緩和が進められています。

想定される運用モデル

  • 複数名で対応する訪問入浴介護から段階的に導入
  • 必要な研修・OJT体制の整備が条件
  • 資格保有者と同様の業務経験を積ませる仕組みが重要

受け入れ見込み人数と業務対象が大幅に見直し

特定技能制度では、今後5年間の受け入れ見込み人数が約82万人に設定されました。これに伴い、分野別の受け入れ上限や業務範囲が広がっています。

主な変更点

  • 新たに追加された分野
    • 自動車運送業、鉄道、林業、木材産業
  • 既存分野の業務追加例
    • 食品スーパーでの惣菜製造
    • 印刷・縫製・陶磁器などの製造工程

育成就労制度が新設され技能実習制度を廃止へ

技能実習制度に代わる新制度「育成就労」が創設される予定です。制度の目的が人材育成と確保に転換され、労働者保護と就労の安定性が強化されます。

育成就労制度のポイント

  • 在留資格が新設され、「育成就労」として明確化
  • 育成計画に基づき最長3年間の就労が可能
  • 転籍も一定の条件下で柔軟に認められる
  • 管理団体に代わり「監理支援機関」が設置され、外部監査が義務化
  • 永住許可の条件や不法就労助長罪の罰則も見直し

外国人労働者数と雇用事業所が過去最多に

外国人労働者の数は過去最高の約205万人に達し、外国人を雇用する事業所数も約32万ヶ所を超えました。国籍や地域、業種を問わず、外国人雇用が全国的に広がっています。

最新の統計から読み取れる傾向

  • 労働者数の増加率が最も高い国:インドネシア、ミャンマー、ネパール
  • 最も多く外国人を雇用している都道府県:東京、愛知、大阪
  • 雇用事業所の約62%が従業員30人未満の中小企業

今後の外国人雇用に向けた実務対応のポイント

外国人雇用は今後も拡大が見込まれる一方で、法改正や制度変更に対応する柔軟な姿勢が求められます。

企業が注視すべきポイント

  • 特定技能制度の対象分野・人数・試験制度の見直し
  • 育成就労制度の施行と既存制度からの移行手続き
  • 円安による待遇や生活支援の見直し
  • 地域社会との共生を意識した環境整備

まとめ

2024年は、外国人雇用制度が大きく前進した1年となりました。特定技能制度の受け入れ拡大、試験制度の改善、訪問介護への導入検討、育成就労制度の新設など、多角的な見直しが行われています。

今後の人材戦略には、制度の最新動向を正しく理解し、現場での実務に適切に落とし込むことが不可欠です。