外国人従業員の退職時に必要な手続きと在留資格の対応方法

外国人従業員が退職する際には、日本人従業員と同様の社内手続きに加え、在留資格に関する対応が不可欠です。企業側には各種保険や税務に関する処理、本人には出入国在留管理局への届け出や年金制度の整理など、多岐にわたる対応が求められます。

本記事では、企業と本人がそれぞれ行うべき退職時の手続きを詳しく解説し、スムーズかつ法令に即した対応を実現するためのポイントを紹介します。

外国人従業員の退職時に企業が行うべき手続き

法令に基づく基本的な手続き一覧

企業が行うべき手続きは、雇用・社会保険・税務関連を中心に以下のように整理できます。

  • 雇用保険の資格喪失届と離職票の発行(ハローワークへ提出)
  • 源泉徴収票の作成と交付(退職後1ヶ月以内)
  • 健康保険証の回収と資格喪失届(5日以内に提出)
  • 厚生年金保険資格喪失手続き(日本年金機構へ)
  • 住民税の未払い処理(市区町村との調整)
  • 外国人雇用状況届出書の提出(退職後1ヶ月以内)
  • 在留カード番号記載様式の作成・提出
  • 退職証明書の発行(本人の請求があれば対応)

これらはすべて法定期限があるため、提出漏れや遅延を防ぐ体制づくりが重要です。

雇用保険と社会保険の手続きの具体的な流れ

雇用保険関連の対応

退職後、10日以内に雇用保険資格喪失届を提出する必要があります。離職票は失業給付申請に不可欠で、企業が発行し、本人に速やかに渡さなければなりません。

健康保険と厚生年金の資格喪失

退職から5日以内に、健康保険と厚生年金の資格喪失届を関係機関へ提出します。健康保険証の回収が困難な場合は「回収不能届」の提出が必要です。

税務関連の手続きと注意点

源泉徴収票の交付は、退職者の確定申告や次の職場での年末調整に不可欠です。正確な金額を記載し、退職翌月以内に必ず渡しましょう。

住民税の一括徴収または本人納付

退職時点で住民税に未納がある場合は、

  • 最後の給与から一括で天引きして納付
  • 本人が市区町村へ直接納付する形式に変更

いずれかを選び、必要書類(特別徴収税額の特例届など)を準備します。

外国人雇用状況の正確な届出が求められる理由

外国人従業員の退職後、企業はハローワークに「外国人雇用状況届出書(離職)」を提出する必要があります。雇用保険被保険者であれば資格喪失届と同時に処理されますが、被保険者でない場合は別途届出が必要です。

この書類には以下の情報を記載します。

  • 在留カード番号
  • 氏名、国籍、生年月日、性別
  • 退職日、雇用形態などの詳細情報

外国人本人が行う退職後の必要手続き

所属機関に関する届け出の義務

外国人が就労資格で在留している場合、退職後14日以内に所属機関に関する変更届を出入国在留管理局に提出しなければなりません。

記載内容には以下が含まれます。

  • 氏名、国籍、生年月日
  • 在留カード番号
  • 退職企業の情報と退職日

これを怠ると、在留資格取消のリスクが生じます。確実に届け出を行うよう本人に促しましょう。

年金の脱退一時金請求のポイント

外国人が帰国する際、以下の条件を満たしていれば年金の脱退一時金を受け取ることが可能です。

  • 日本の年金制度に6か月以上加入している
  • 年金受給資格を満たしていない
  • 帰国後2年以内に請求する

請求には「脱退一時金請求書」の提出が必要となり、保険料納付期間に応じて金額が決まります。ただし、受給するとその期間の年金加入実績が抹消されるため、本人が内容を理解した上で判断することが重要です。

退職後の在留資格維持と再就職の注意点

再就職までの期間と在留資格の維持

原則として、就労資格保持者が3ヶ月以上仕事をしていない状態が続くと、在留資格取消の対象になります。ただし以下のようなケースでは例外が認められることがあります。

  • 積極的に就職活動を継続している
  • 治療・出産・育児などやむを得ない事情がある
  • 入管が在留継続の合理性を認めた場合

本人には、退職後できるだけ早く新しい職場を探すか、特定活動ビザへの変更を検討するよう伝える必要があります。

企業が対応時に注意すべきポイント

外国人本人の手続きへの支援と情報提供

退職後、外国人本人が行うべき手続きに関して、企業は正確な情報提供を行う責任があります。特に、以下のサポートが有効です。

  • 在留資格変更・更新の方法の案内
  • 届出期限の通知
  • 必要書類の案内やサンプルの提供
  • 多言語対応資料の準備

本人が手続きを怠ると、企業側の信頼にも関わるため、丁寧な対応が求められます。

届出期限を組織的に管理する仕組みが重要

多くの手続きに法定期限が設けられており、違反すると企業にもペナルティが発生する場合があります。対策としては、

  • 手続きごとの期限一覧を作成
  • 担当部署での共有体制の整備
  • チェックリストや進行表の運用

などを導入することで、漏れのない対応が可能になります。

従業員の動向把握と対応方針の明確化

退職者が帰国するのか、国内で転職するのかによって、企業側の支援内容も変わります。プライバシーに配慮しつつ、今後の進路を確認し、以下のような案内を行いましょう。

  • 帰国予定者:脱退一時金・健康保険脱退手続きなど
  • 転職予定者:在留資格の継続・変更、就職活動支援など

まとめ:適切な手続きと情報提供で円滑な退職を実現

外国人従業員の退職手続きは、企業・本人ともに多くの法的義務と注意点を含んでいます。企業は、社会保険や税務処理だけでなく、在留資格に関する情報提供も含めた総合的な対応が求められます。

外国人本人も、所属機関変更届や年金手続きなどを期限内に行う必要があり、企業のサポート体制がその実行を大きく左右します。

手続きを単なる事務処理と捉えるのではなく、外国人材との信頼関係を築く機会と考え、丁寧で確実な対応を心がけましょう。適切な退職支援は、企業の国際的な人材活用の質を高める重要な一歩となります。