農業分野では高齢化や後継者不足によって人手不足が深刻化しています。これに対応するため、日本政府は外国人労働者を受け入れる「特定技能制度」を導入しました。
本記事では、特定技能「農業」の制度内容、就労可能な業務、企業側の要件、採用までの手順、必要な費用までをわかりやすく解説します。制度を理解し、スムーズな受け入れを実現するためのポイントを詳しく紹介します。
特定技能「農業」の制度とは?概要と特徴を解説
特定技能「農業」は、一定の技能と日本語能力を有する外国人を農業分野で雇用できる制度です。国内の農業従事者の減少と高齢化に対応する目的で設けられました。
主な特徴は以下の通りです
- 正社員としての直接雇用が原則(農業分野では派遣も可能)
- 日本人と同等の待遇(平均月給約20万円)
- 最長5年間の在留が可能(累計で10年まで就労可能)
- 閑散期には帰国し、繁忙期に再入国する柔軟な運用も可能
この制度により、繁忙期に必要な人材を確保しやすく、農業経営の安定化が図れます。
特定技能「農業」で従事できる業務内容
外国人が就ける業務は、明確に区分されています。
耕種農業に関する業務
- 作物の栽培管理
- 農産物の収穫・出荷・選別
- 使用機材の操作や管理
畜産農業に関する業務
- 家畜の飼養・管理
- 畜産物の出荷準備・選別
- 繁殖管理や衛生管理
関連業務(補助的に従事可能)
- 農畜産物の加工・運搬・販売
- 冬季の除雪作業
注意点
- 関連業務を主業務として雇用することはできません。
- 耕種と畜産の業務を同時に行うことは不可です。
- 認められていない業務を任せると、不法就労と見なされ、企業にも罰則が科されます。
特定技能「農業」の受け入れ企業が満たすべき条件
受け入れ企業には法令遵守だけでなく、制度上の要件も課せられています。
農業特定技能協議会への加入が必須
- 在留資格の申請時点で協議会に加入済である必要があります。
- 協議会では外国人の状況報告、不正防止策の共有、受け入れの質の向上などが行われます。
- 一度加入すれば地域協議会の構成員として扱われ、以降の追加手続きは不要です。
外国人労働者への支援体制の構築
外国人の生活や労働環境に配慮する支援を行う必要があります。
支援内容には以下が含まれます
- 入国時・退去時の送迎
- 住居確保と契約サポート
- 公的手続きへの同行
- 日本語学習機会の提供
- 生活オリエンテーションの実施
- 相談や苦情対応の窓口設置
- 定期面談・行政への報告
支援業務は自社で行うか、登録支援機関に委託することができます。
特定技能「農業」を取得するための条件と試験内容
外国人が特定技能「農業」の資格を得るには、以下のいずれかの条件を満たす必要があります。
試験に合格する
- 農業分野の技能測定試験(学科・実技)
- 日本語試験(JFT-Basicまたは日本語能力試験N4以上)
試験の特徴
- CBT方式とペーパーテストの併用
- 学科では栽培・飼養管理、安全衛生などの知識を問う
- 実技では写真や図を用いて作業能力を評価
- 試験時間は60分、費用は8,000円程度
技能実習2号を修了する
- 日本で3年間の技能実習(農業分野)を終えた者は、試験免除で特定技能1号に移行可能
- 試験に比べ手続きが簡素で、即戦力として期待されやすい
特定技能「農業」の採用フローと手続きの流れ
採用までのステップは、外国人が日本国内にいるか、海外にいるかで異なります。
採用の一般的な流れ
- 技能試験・日本語試験に合格または実習2号修了
- 雇用契約の締結
- 支援計画の作成・健康診断の実施
- 在留資格の変更(国内)または認定申請(海外)
- (海外の場合)ビザ申請・交付後に入国
- 就労開始
海外から採用する場合は、採用決定から就労開始までに4〜6か月程度を見込む必要があります。
特定技能「農業」の採用に必要な費用項目
外国人を受け入れる際には、以下の費用が発生します。
紹介手数料・送出費用
- 人材紹介会社や送出機関への費用
- 一人あたり30万~60万円
- 海外在住者の場合、追加で10万~60万円が必要になることも
賃金関連費用
- 日本人と同等以上の賃金を支払う義務あり
- 賞与や手当、家賃補助も考慮する必要あり
支援費・ビザ申請費
- 自社対応なら人件費、外部委託なら15万~25万円の委託料
- 健康診断費(1万円前後)は企業側が負担
費用を抑えるコツ
- 国内在留の外国人を採用する
- 自社で支援を行う(ただし専門知識が必要)
外国人雇用で農業現場の人手不足を補う
特定技能「農業」は、即戦力となる外国人材を柔軟に受け入れることができる制度です。耕種農業や畜産農業といった実務に直接関与できるため、慢性的な人手不足に悩む農業経営者にとっては大きな助けになります。
ただし、採用には明確な手順と費用が伴い、制度の理解や体制整備が求められます。登録支援機関の活用や社内支援体制の構築を検討しながら、制度を有効に活用していくことが重要です。


