日本国内の労働力不足を背景に、外国人材の採用が急増しています。一方で、言葉や文化の違いによる不安やトラブルを理由に、採用後に内定を取り消そうとする企業も見られます。しかし、外国人であっても日本の法律のもとでは、正当な理由がなければ内定の取り消しは違法とされます。
本記事では、外国人の内定取消が認められるケースや、取り消す際の手続きと注意点を具体的に解説し、企業がとるべき適切な対応策についてまとめます。
外国人の内定取り消しが違法となる主な理由
雇用契約とみなされる内定の重み
内定は、採用予定者との間に労働契約が成立している状態とみなされます。そのため、企業側の一方的な都合による内定の取り消しは、解雇と同等の扱いとなります。内定者が外国人であっても、この点に変わりはありません。
内定を取り消すには、次のような合理的かつ客観的な理由が必要です。
- 内定時点で採用条件を満たしていなかった場合
- 健康状態や能力により業務が遂行できないことが判明した場合
- 経歴詐称などの重大な違反行為があった場合
日本語力や文化の違いを理由にした内定取消は、いかなる事情があっても正当な理由にはなりません。
外国人内定取消が認められるケース
学校卒業の失敗による内定無効
外国人の新卒採用においては、「卒業を前提とした内定」であることが一般的です。万が一、学業を修了できなかった場合には、内定の前提条件が満たされないため、取り消しが認められる可能性があります。
労働に支障をきたす重度の病気やケガ
採用後に発覚した重大な健康上の問題により、業務の遂行が困難な場合は、内定の取り消しが適法と判断されるケースがあります。
以下のような状況では、内定取り消しの正当性が認められやすくなります。
- 長期入院や療養が必要な難病を発症
- 精密作業に必要な機能が失われた
- 判断力を要する業務に従事できない精神的障害
一方、軽度の風邪や短期的なケガであれば、業務への影響が少ないため、取消は認められません。
採用条件に関わる経歴詐称
外国人が履歴書や面接時に虚偽の申告をしていたことが後に判明した場合、内定取り消しが妥当とされることがあります。具体的には以下のようなケースです。
- 学歴や卒業年次の虚偽記載
- 就業に必要な資格の偽装
- 勤務歴やスキルの誇張
ただし、職務内容に関係のない情報での虚偽申告であれば、慎重な対応が必要です。
就労ビザの申請状況に応じた正しい対応
就労ビザ申請中に内定を取り消す場合
ビザ申請中の外国人に対して内定を取り消す場合は、出入国在留管理局に対して「申請取下書」を提出する必要があります。電話や口頭では受け付けられず、必ず書面での提出が求められます。
提出書類の主な内容は以下の通りです。
- 氏名、生年月日、国籍
- 申請番号、申請日
- 取り消し理由の明示
- 企業名と担当者の署名
また、申請受付票や在留資格認定証明書(既に発行済みの場合)も同時に提出が必要です。
就労ビザ許可後に取り消す場合
就労ビザがすでに許可されている場合は、在留カードの返納手続きが必要です。在留カードを返納しないまま雇用を放棄すると、企業・外国人双方に不利益をもたらすため、迅速に対応することが重要です。
返納は、出入国在留管理局への持参または郵送により行います。封筒には「在留カード等返納」と明記し、確実に対応しましょう。
外国人の内定取消における5つの重要な注意点
適切な対応を怠ると企業リスクが拡大
外国人の内定を取り消す場合、法律面・企業評価の両面で慎重な対応が求められます。以下に主な注意点を整理します。
解雇と同様の手続きが必要になる
- 内定取消は、30日前までに書面で通知する必要があります。
- 通知が30日未満の場合は、賃金補償の義務が生じます。
不適切な取消で企業名が公表される可能性
- 厚労省の条件に該当すると、企業名が公表されることがあります。
- 公表により企業の信用が失われ、採用活動にも悪影響が出る恐れがあります。
評判悪化による風評リスク
- SNS等での情報拡散により、企業の悪評が広がる可能性があります。
- 将来的な外国人採用に悪影響を及ぼすこともあります。
不当取り消しで法的責任を問われる可能性
- 裁判で企業の違法性が認められれば、損害賠償や雇用義務が課されます。
- 精神的損害に対する慰謝料を請求される場合もあります。
外国人採用そのものが困難になるリスク
- 在留資格取り下げが多発すると、入国管理局からの信頼を失い、今後の外国人雇用が難しくなる可能性があります。
外国人採用を円滑に進めるための対策
トラブルを未然に防ぐ採用体制の構築
外国人材の雇用では、文化や言語の違いを理解し、事前に十分なコミュニケーションをとることが不可欠です。以下のような体制を整えることで、トラブルや誤解のリスクを軽減できます。
- 採用前に業務内容・条件を明確に伝える
- 日本語教育やOJTを含むサポート体制を整備
- 就労ビザや在留資格に関する正確な知識を持つ
- 入社前後のフォローアップを定期的に実施
また、外国人材紹介サービスや登録支援機関の利用も有効な手段です。専門機関のサポートを受けることで、採用から就労開始までの各種手続きをスムーズに進めることができます。
まとめ
外国人の内定取り消しは、日本人と同様に厳格な法律のもとで扱われます。企業側の都合や不十分なコミュニケーションによる判断では、取り消しは違法とみなされることがあります。ビザや在留資格など、外国人特有の法的背景を理解したうえで、慎重な対応が求められます。
企業としては、採用段階から就労開始後まで、外国人との信頼関係を築きながら適切な雇用管理を行うことが不可欠です。採用の自由はありますが、その責任も同時に問われる時代であることを意識し、法令遵守と誠実な対応を心がけましょう。


