特定技能「漁業」の雇用条件と採用手順を詳しく解説

日本の漁業分野では、慢性的な人手不足と従事者の高齢化が深刻な問題となっています。これを背景に創設されたのが、外国人が即戦力として働ける「特定技能『漁業』」の在留資格です。この制度では、外国人が漁業や養殖業に従事することが可能となり、事業者側には法令遵守や支援体制の整備などが求められます。

直接雇用に加えて派遣雇用も認められており、柔軟な働き方ができる点も特徴です。本記事では、制度の概要から具体的な採用フロー、かかる費用までを詳しく整理して解説します。

特定技能「漁業」の制度概要と目的

漁業における人手不足は深刻で、特に若年層の確保が困難な状況が続いています。高齢者の比率が高まり、漁業就業者の数は年々減少しています。

こうした状況を改善するため、一定の技能と日本語能力を持つ外国人材を受け入れる仕組みとして特定技能制度が導入されました。

特定技能「漁業」の基本情報

  • 対象業務:漁業および養殖業
  • 雇用形態:直接雇用、派遣雇用の両方が可能
  • 在留期間:通算5年(特定技能1号の場合)
  • 最大受け入れ人数:6,300人(制度全体における目安)
  • 平均月給:236,694円程度

漁業分野は季節ごとに業務の繁閑があるため、派遣形態も認められている点が他分野と異なる特徴です。

特定技能「漁業」で就ける主な仕事

特定技能「漁業」で従事可能な業務は、漁業と養殖業に分類されます。それぞれの業務内容は以下の通りです。

漁業の主な業務内容

  • 水産動植物の探索・採捕
  • 漁具・漁労機械の操作、整備
  • 漁具の製作・補修
  • 漁獲物の選別、処理、保存
  • 安全管理と衛生対策

養殖業の主な業務内容

  • 養殖水産動植物の育成・収穫・処理
  • 養殖施設や資材の管理・補修
  • 養殖作業の安全確保

関連業務として、市場での選別や機器の点検なども可能ですが、それらだけを業務とする雇用はできません。

派遣雇用が認められる理由と雇用形態の違い

特定技能「漁業」では、直接雇用に加え、派遣雇用も制度上認められています。これは、漁業の季節性や地域特性に対応しやすくするためです。

雇用形態ごとの特徴

雇用形態契約先就業場所
直接雇用事業者と外国人事業者の指揮下で勤務
派遣雇用派遣元と外国人派遣先事業者で勤務

派遣元は、労働者派遣事業の許可を取得しており、漁業関連の活動実績がある必要があります。

特定技能1号と2号の漁業分野での違い

制度には「1号」と「2号」の2段階があり、漁業では近年2号の対象に追加されました。2号は熟練労働者向けで、在留期間の更新が可能です。

特定技能1号と2号の主な違い

  • 技能水準
    • 1号:初級技能+日本語試験(N4程度)
    • 2号:実務経験+高度技能+日本語試験(N3以上)
  • 在留期間
    • 1号:最大5年(延長不可)
    • 2号:更新可能(実質無期限)
  • 家族の帯同
    • 1号:不可
    • 2号:配偶者・子どものみ可能

2号は、現場経験を積み、指導や工程管理の役割がこなせる人材が対象となります。

事業者に求められる受け入れ要件

特定技能外国人を受け入れるためには、事業者側にも一定の条件を満たす必要があります。

主な要件

  • 労働・社会保険・租税関連法令を遵守していること
  • 労働時間・報酬が日本人と同等であること
  • 漁業特定技能協議会へ加入済みであること
  • 行政処分歴や失踪者の有無などに問題がないこと

違反があると、受け入れ機関として登録できなくなります。

必須の支援体制

外国人労働者には、以下の支援が義務づけられています。

  • 出入国時の送迎、住居の確保
  • 日本語学習の機会提供
  • 生活オリエンテーション
  • 公的手続きの同行
  • 苦情・相談対応
  • 日本人との交流支援
  • 定期的な面談・報告

これらは自社で実施するか、登録支援機関に委託することが可能です。

資格取得に必要な試験と条件

特定技能1号「漁業」を取得するには、以下いずれかの方法を満たす必要があります。

方法1:技能測定試験と日本語試験に合格

  • 技能試験:漁業または養殖業に関する知識と実技を評価
  • 日本語試験:JFT-BasicまたはJLPT N4以上が必要

試験は日本国内外で実施されており、言語サポートも複数あります。

方法2:技能実習2号「漁業」の修了

以下の作業を修了していれば、試験が免除され移行が可能です。

  • 漁業職種(かつお一本釣り、刺し網漁業など9種)
  • 養殖業職種(ほたてがい、まがき養殖など)

特定技能「漁業」の採用手続きと流れ

特定技能外国人の採用は、在留者と海外在住者で流れが若干異なりますが、基本的には以下のステップです。

採用の一般的な流れ

  1. 技能試験・日本語試験に合格、または技能実習2号修了
  2. 雇用契約の締結
  3. 支援計画の作成・ガイダンス実施
  4. 在留資格の申請(または認定証明書の交付申請)
  5. 在留資格の取得・就労開始

海外からの場合はビザ申請や入国手続きが追加され、手続きには4~6か月程度かかります。

特定技能「漁業」の採用にかかる費用

採用には複数の費用がかかります。事前に予算を確保しておくことが重要です。

主な費用項目と相場

  • 人材紹介料:30~60万円/人(紹介会社へ)
  • 在留資格手続き費用:約10万円
  • 支援費用:2~3万円/月(登録支援機関に委託する場合)

費用を抑えるには、自社で募集・支援を行う方法もありますが、対応できる体制が必要です。

まとめ:特定技能「漁業」で持続可能な漁業へ

特定技能「漁業」制度は、日本の漁業における人材確保と技能継承の新たな手段です。外国人労働者の受け入れには、法令遵守や支援体制の整備といった準備が不可欠ですが、制度を正しく活用することで、持続可能な漁業の実現につながります。

今後の人材戦略の一つとして、積極的な検討が求められる分野です。