特定技能外国人を雇用する際、雇用契約書と雇用条件書の作成は必須です。これらの書類は、外国人労働者とのトラブルを未然に防ぎ、採用プロセスを円滑に進めるために欠かせません。契約内容には法令で定められた項目を正確に記載する必要があり、母国語による翻訳対応も求められます。
本記事では、契約書作成に必要な情報、記載項目、注意点、企業が守るべき手続きまでをわかりやすくまとめています。
特定技能雇用契約の基本とその意義
特定技能外国人の受け入れに必要な契約
特定技能外国人を雇用する場合、「特定技能雇用契約」を締結することが法的に義務づけられています。この契約は、労働条件を明確にし、外国人と企業の双方が安心して雇用関係を築くためのものです。
記載内容が基準に満たない場合、在留資格の許可が下りないこともあるため、正確な書類作成が求められます。
契約書・雇用条件書の違いと役割
契約書と雇用条件書には、それぞれ異なる役割があります。
| 書類名 | 役割と特徴 |
|---|---|
| 雇用契約書 | 基本的な契約事項(契約期間・業務内容など)を明記 |
| 雇用条件書 | 勤務時間・賃金・休日など、より詳細な条件を明示 |
いずれの書類も、日本語と外国人が理解できる言語(英語やベトナム語など)で作成し、本人に内容を説明・理解してもらう必要があります。
雇用契約書・雇用条件書に記載すべき内容
契約書に記載すべき主な項目
以下の情報は、特定技能雇用契約書に必ず記載する必要があります。
- 特定技能所属機関名
- 特定技能外国人の氏名
- 契約締結日
- 契約期間と就業開始予定日
- 試用期間の有無と条件
- 停止条件(ビザ不許可時など)
- 労働基準法に則った労働条件
- 双方の署名・捺印
雇用条件書の詳細項目一覧
| 区分 | 記載内容の詳細 |
|---|---|
| 勤務場所 | 複数ある場合はすべて記載し、主たる場所を明記 |
| 業務内容 | 特定技能の分野および業務区分を明確に記載 |
| 勤務時間 | 始業・終業時刻、休憩時間、所定労働日数・時間、交代制勤務の内容 |
| 休日・休暇 | 週休、年間休日数、有給休暇の日数など |
| 賃金 | 基本給、手当、控除項目、総支給額、手取り額の目安 |
| 社会保険の有無 | 健康保険・厚生年金・雇用保険・労災保険の適用状況 |
| 健康診断 | 雇入れ時・定期健康診断の時期 |
| 退職時の手続き | 退職意思表示の期限(例:30日前に通知) |
| 翻訳・署名 | 母国語による説明、本人の自筆署名が必要(パスポート記載名と同一に) |
賃金に関する記載の注意点
誤解を防ぐための賃金記載ポイント
外国人労働者が不安を感じやすいのが「実際に受け取る給与額」です。以下の点に注意して、明確に記載しましょう。
- 基本賃金:残業代を含まない月給または時給
- 各種手当:通勤手当、住宅手当などの金額と支給条件
- 控除項目:社会保険料、住民税などの明示
- 総支給額と手取り額:実際の受取額がわかるよう計算例を記載
表にまとめると以下のようになります。
| 賃金項目 | 記載内容例・注意点 |
|---|---|
| 基本給 | 固定残業代を除いた金額。最低賃金を下回らない |
| 諸手当 | 内容・金額・支給条件を明確に記載 |
| 控除項目 | 社会保険・税金など控除の内訳を記載 |
| 支給総額 | 基本給+手当の合計 |
| 手取りの目安額 | 控除後の想定支給額を記載 |
就業条件の記載ミスを防ぐための対策
契約書の記載漏れやミスは、提出後の再修正や不許可の原因になります。特に注意すべき点は以下のとおりです。
- 勤務場所が複数ある場合、すべてを記載する
- 交代制勤務のシフトはパターンすべてを記載
- 派遣雇用が認められていない分野での誤記載を避ける
- 賃金項目が日本人と同等以上でなければならない
外国人への契約説明と理解の確認方法
契約書を作成するだけでは不十分です。本人が内容を正しく理解し、納得したうえで署名する必要があります。対応方法としては以下の通りです。
- 契約書を翻訳し、併記する
- 通訳を用意し、説明に同席させる
- 契約書を読み上げながら、逐一説明する
- 不明点はその場で質問を受け付ける体制を整える
雇用契約締結後に企業が行うべき対応
雇用契約書の作成・締結後も、企業には継続的な義務があります。
| 義務内容 | 概要 |
|---|---|
| 分野ごとの基準の遵守 | 業種ごとに定められた給与体系・雇用形態などに従う |
| 支援計画の策定 | 生活支援・就業支援などの詳細計画を提出 |
| 事前ガイダンスの実施 | 日本での生活・マナー・ルールなどを説明 |
| 条件変更時の届け出 | 変更後14日以内に入管へ届け出が必要 |
| 四半期ごとの定期報告 | 面談結果を記録・提出 |
| 契約書の保管 | 契約終了後1年以上保管する義務あり |
まとめ:正確な契約書作成が信頼ある雇用の第一歩
特定技能外国人を受け入れる際の契約書作成は、単なる形式作業ではなく、企業と外国人の信頼を築く第一歩です。制度に基づいた正確な記載と、本人への丁寧な説明を徹底することで、安定した雇用関係の構築につながります。
企業が押さえるべきポイント
- 書類作成は制度に即して正確に行う
- 就業条件は具体的かつ明確に記載する
- 外国人が理解できる形で説明・翻訳を行う
- 契約後も報告や支援などの継続的な対応が必要
トラブルを防ぎ、円滑な労務管理を実現するためにも、契約書の作成・運用は慎重かつ丁寧に行うことが求められます。


