特定技能制度は、即戦力となる外国人材を受け入れるための在留資格制度であり、主に人手不足が深刻な12分野で活用されています。しかし、特定技能外国人は転職が認められているため、せっかく採用しても他社へ移ってしまう可能性があるという課題があります。
本記事では、特定技能外国人が転職する際の条件や手続き、転職が起きる主な理由、転職によるリスクへの対応方法、さらに長期的に定着してもらうための具体的な工夫について解説します。
特定技能外国人は条件を満たせば転職可能
特定技能外国人は、在留資格や活動内容が「指定書」で細かく定められている一方で、一定の条件を満たせば転職することができます。
転職時に必要な条件
転職が認められるかどうかは、以下の条件によって異なります。
- 同一業種・業務への転職であれば試験不要
- 異業種に転職する場合は、該当分野の評価試験に合格が必要
- 転職先企業が受け入れ要件を満たしている必要あり
- 転職時には出入国在留管理庁への届け出と在留資格変更許可申請が必須
転職の自由度は高いものの、行政手続きや受入先の条件などに注意が必要です。
転職中の就労制限に注意
在留資格変更許可申請の審査期間中は、他社での就労(アルバイト含む)は認められていません。無職期間が発生するリスクがあるため、転職は計画的に進める必要があります。
特定技能外国人の転職理由と背景
外国人労働者が転職を選択する背景には、さまざまな事情があります。企業側が理解しておくことで、事前の対策も可能になります。
主な転職理由
- 職場環境への不満
人間関係や労働条件への不満、過重労働、言葉の壁など。 - 待遇への不満
日本人社員と比べて不利な賃金や福利厚生の格差があると不満が募りやすい。 - 会社都合による退職
倒産や事業縮小など、雇用継続が難しい場合。 - キャリアアップ目的
別分野に挑戦したい、スキルを活かせる環境を求めての転職。 - 技能実習から特定技能への移行時の転職
制度の変更に伴って企業を変えるケースも多い。
転職に必要な手続きと注意点
転職にあたっては、本人と企業側それぞれに複数の手続きが必要となります。
本人が行うべき手続き
- 在留資格変更許可申請
- 契約機関に関する届出(入国管理局へ提出)
転職先が異業種の場合は、事前に該当分野の評価試験に合格しておく必要があります。
転職元企業の対応
- 特定技能所属機関としての退職届出
- 雇用保険資格喪失手続き
- ハローワークへの外国人雇用状況届出
転職先企業の対応
- 新たな雇用契約の締結
- 入管への申請書類の準備・提出
- 雇用開始後の四半期報告と定期的なモニタリング対応
特定技能外国人が転職できる12分野
転職が可能な分野は以下の通りで、基本的にこれらの分野間での転職が可能です。
- 介護
- 建設
- 農業
- 外食業
- 飲食料品製造業
- 宿泊業
- 自動車整備
- ビルクリーニング
- 漁業
- 航空
- 造船・舶用工業
- 素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業
業種を変更する場合には評価試験への合格が必要になるため、事前準備が不可欠です。
転職リスクとその対応策
企業にとって、特定技能外国人の突然の退職は業務に大きな影響を及ぼすことがあります。
転職に関する課題
- 退職の突然の申し出
外国人労働者の中には退職の意向を事前に伝えないケースもあり、業務に支障をきたす可能性があります。 - 引き抜き行為
法務省は引き抜きの自粛を呼びかけていますが、実態としては発生している例もあるため注意が必要です。 - 悪質な仲介業者の関与
高額な手数料を請求するブローカーの存在は、本人にも企業にもリスクを及ぼします。
特定技能外国人を長期定着させるための取り組み
転職を防ぎ、安定的な雇用関係を築くには、外国人が安心して働ける環境づくりが不可欠です。
長期定着に向けた実践的対策
- 母国語でのオリエンテーション実施
入社時にルールや業務内容を正しく伝えることで誤解を防ぐ。 - 定期的な面談と相談体制の整備
不安や不満を早期に察知し、対処できる環境づくり。 - 適正な待遇と労働環境の確保
同一労働同一賃金の観点で、日本人との待遇格差をなくす努力。 - 登録支援機関の活用
法的支援や生活面でのサポートを外部機関と連携して行う。 - キャリア形成支援
技能試験の対策支援や昇進機会の提供など、将来の展望を持たせる。
離職を未然に防ぐための社内ルール整備
転職を防ぐためには、社内制度として以下の点をあらかじめ整備しておくことが有効です。
- 転職の意思は30日前に申告するルールを設定
- 離職理由や希望を聞く定期的な面談の実施
- 人事制度や評価制度の見直しによるモチベーション維持
まとめ
特定技能外国人は、条件を満たせば自由に転職できる立場にあります。だからこそ、企業側には「選ばれる職場」であり続ける努力が求められます。待遇や環境を整え、外国人材との信頼関係を築くことで、長期にわたる安定した雇用が実現可能です。
採用から定着までの全体設計を意識し、持続可能な人材確保の仕組みを構築することがこれからの企業に必要な取り組みとなるでしょう。


