特定技能「工業製品製造業」の採用条件と手続きの流れ

深刻化する製造業の人手不足に対応するため、「特定技能」制度を活用する企業が増えています。特に2024年から制度が見直され、工業製品製造業分野として受け入れ対象が拡大されました。

本記事では、工業製品製造業分野における特定技能外国人の受け入れ要件や、企業側・外国人側に求められる条件、具体的な採用手順までを体系的に解説します。

特定技能制度の概要と製造業における役割

特定技能制度は、専門性のある外国人労働者を一定の産業分野で受け入れる制度で、特に人手不足が深刻な製造業での活用が期待されています。

製造業で活用される理由

国内の若年労働者数が年々減少しており、製造現場では担い手不足が続いています。この問題に対応するため、即戦力となる外国人を中長期的に雇用できる枠組みが必要とされてきました。

特定技能制度は、一定の技術を持つ外国人が試験を経て在留資格を取得することで、企業にとっては次世代の人材確保に直結します。特に特定技能2号に移行することで、永続的な就労や家族の帯同も可能になるため、定着率の向上も見込めます。

工業製品製造業分野で対象となる業種と業務

2024年4月の制度改正により、従来3分野に分かれていた製造業が「工業製品製造業」として再編され、より多くの業種が対象になりました。

主な対象業種と業務内容

以下の業種では、特定技能外国人の受け入れが可能です。

  • 素形材産業(鋳造、金属加工など)
  • 産業機械製造業(各種機械、工具の製造)
  • 電気・電子情報関連産業(電子部品、電気機器の製造)
  • 金属表面処理業(めっきや熱処理など)
  • プラスチック・紙器・縫製・印刷などの製造業

対応する業務区分

対象業種ごとに、外国人が従事できる業務も定められています。例えば以下のような作業が含まれます。

  • 機械金属加工
  • 電気電子機器の組立
  • 金属表面処理作業
  • 縫製や印刷・製本に関する工程

これらの業務に従事するには、指定された試験の合格が必要です。

受け入れ企業が満たすべき条件と注意点

特定技能制度を活用するには、企業側にも明確な基準が設けられています。

企業側の主な要件

  • 製造業を継続していること
    出荷実績などで継続的な事業活動を証明する必要があります。
  • 自社の原材料で製造していること
    他社からの委託加工のみでは対象外となる場合があります。
  • 「協議・連絡会」への加入が必須
    「製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会」への入会は、制度利用の前提条件です。

入会手続きにおける注意点

提出書類の不備や情報の不明瞭さが審査遅延の原因になることがあります。特に次のような点に注意が必要です。

  • 出荷製品の写真は鮮明で対象が明確なものを用意する
  • 製品の説明文は簡潔かつ具体的に記載する
  • 納品書などは1年以内のものを提出する

外国人側に求められる試験とスキルレベル

特定技能制度の対象となる外国人には、言語力と技能の両方が求められます。

日本語能力の要件

以下のいずれかを満たすことで、制度の要件に適合します。

  • 日本語能力試験(JLPT)N4以上
  • 国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)A2以上

技能評価試験の詳細

外国人が従事する業種に応じて、技能評価試験を受験します。特定技能1号では以下の点が重要です。

  • 学科・実技の2つの試験に合格する必要がある
  • 正答率は学科65%以上、実技60%以上
  • 試験はCBT方式で実施される
  • 年3回程度、日本国内および一部海外で実施される

特定技能2号を目指す場合は、さらに高度な専門性と経験が必要になります。

採用手続きと在留資格取得の流れ

採用ルートにより必要な手続きは異なりますが、いずれも制度に則った手順が必要です。

技能実習からの移行

  • 実習終了後、要件を満たせば比較的スムーズに移行が可能
  • 在留資格変更申請を行い、特定技能1号へ移行

留学生からの移行

  • 在学中のアルバイト経験者が対象
  • 技能試験と日本語試験に合格後、在留資格を変更

海外から直接採用する場合

  • 雇用契約と支援計画を作成
  • 在留資格認定証明書を申請
  • 現地で査証(ビザ)取得後に来日し、就労を開始

特定技能制度を活用するメリットと実務上のポイント

特定技能制度は、単なる人材補充だけではなく、企業の成長戦略にも寄与する制度です。

活用のメリット

  • 若年層の人材確保に貢献
  • 長期雇用による人材定着
  • 現場の活性化と技術承継の促進
  • 多国籍な職場環境の形成で新たな価値を創出

導入時の実務上の注意点

  • 外国人支援体制の構築(住居、生活指導など)
  • 翻訳対応や通訳人材の確保
  • 就労管理と労働条件の適正化
  • 制度変更への柔軟な対応力

企業側の準備や運用体制が整っていないと、せっかく採用した外国人が早期離職する可能性もあるため、制度の理解と事前準備が極めて重要です。

今後の展望と制度活用のポイント

工業製品製造業における特定技能制度の対象範囲は、今後さらに拡大される可能性があります。企業がこの制度を戦略的に活用するためには、次のような姿勢が求められます。

  • 自社の業務内容と制度の適合性を明確にする
  • 制度変更に迅速に対応できる情報収集体制を整える
  • 外国人が安心して働ける環境づくりに投資する

安定的な人材確保を実現するには、採用から就労までの一連の流れを理解し、持続的な雇用環境の構築に取り組むことが重要です。企業の未来を担う人材育成の一環として、特定技能制度を上手に活用していきましょう。