特定技能制度に基づき外国人を雇用する場合、受け入れ企業は「生活オリエンテーション」の実施が義務付けられています。このオリエンテーションでは、日本での生活に必要な知識やマナー、公的手続き、緊急時の対応方法などを丁寧に伝える必要があります。
本記事では、生活オリエンテーションの実施内容や注意点、外部委託の活用方法までをわかりやすく解説します。
生活オリエンテーションの基本概要
生活オリエンテーションとは、特定技能1号の外国人が日本で安全・快適に生活し、トラブルを回避できるようにするための支援活動です。言語や文化の違いによる不安を軽減し、生活・労働の定着を図る役割も担います。
企業は、外国人が入国した後や在留資格変更後、速やかにオリエンテーションを実施しなければなりません。
オリエンテーションの実施方法と時間
柔軟な実施形式
以下の形式で実施が可能です。
- 対面形式での講義や説明
- オンライン会議システムを活用した実施
- 説明動画の視聴と質疑応答の組み合わせ
ただし、いずれの方法であっても、参加者が疑問点をすぐに相談できる体制が必要です。また、説明内容は外国人が理解できる言語で提供し、母国語対応や通訳の活用も求められます。
所要時間の目安
- 原則として8時間以上の実施が必要
- 留学生や技能実習からの移行者は4時間以上でも可
- 転職時は新たな企業で再実施が必要
日本での生活に関する基本的知識の提供
日常生活のルールとマナー
日本特有の生活ルールや文化を理解してもらうため、以下の内容を伝える必要があります。
- 金融機関やATMの利用方法
- 医療機関の使い方と受診の流れ
- ゴミの分別方法や出し方
- 夜間の騒音やポイ捨てなど迷惑行為の注意
- 公共交通機関の使い方(ICカード、切符の購入など)
- 交通ルール(歩行者優先、自転車の保険加入など)
違法行為の理解促進
日本で犯罪とされる行為を明確に伝えることで、不本意な違反を防ぐことができます。主な内容は次の通りです。
- 薬物所持・使用の禁止
- 他人の在留カード・銀行口座の使用禁止
- 不正なアルバイトや無許可労働の禁止
- 他人の宅配便の不正取得や自転車の無断使用
公的手続きと届け出の説明
必要な届出とタイミング
外国人労働者には、以下の公的手続きが求められます。
- 所属機関(雇用主)の変更届出
- 転居に伴う住居地変更の届出
- 健康保険や年金の加入・脱退手続き
- 住民税や所得税に関する知識
- マイナンバーカードの取得と活用方法
自転車の防犯登録
自転車の購入・譲渡に際して防犯登録が必要であること、盗難・撤去時の対応方法なども併せて説明します。
相談窓口と苦情受付の連絡先共有
支援体制と連絡先の明示
問題や不安を抱えた際に、すぐに相談できる環境づくりが求められます。以下の連絡先を事前に伝えておきましょう。
- 企業内または登録支援機関の担当者連絡先
- 地方出入国在留管理局
- 労働基準監督署
- ハローワーク
- 法テラス(法律相談)
- 各市区町村の窓口
- 警察署・交番
- 外国人本人の大使館や領事館
外国語対応可能な医療機関の案内
医療機関の中には、通訳スタッフを配置していたり、通訳サービスを提供しているところもあります。受け入れ企業は、こうした施設を事前に調査し、外国人労働者に案内しておくことが求められます。
また、高額医療費への不安を解消するため、民間の医療保険や通訳費補助制度の案内もあわせて行います。
災害・緊急時の対応方法と備え
災害が頻発する日本では、事前の情報共有が非常に重要です。
必須の説明内容
- 緊急時の連絡先(110番、119番、118番)
- 地震・台風・火災などの発生時の対応方法
- 避難所の場所と避難の手順
- 防災グッズの準備と使用方法
- 消火器の使い方、火の取り扱いに関する注意点
労働・出入国に関する法令知識
労働時間の上限や休日労働、残業代の支払いなどに関して、不適切な扱いを受けた場合の相談先を伝える必要があります。
- 労働基準法の違反に関する相談は労基署へ
- 在留資格に関する問題は入管へ
- 年金の脱退一時金や受給権については年金機構へ
オリエンテーション実施時の実務的注意点
個別事情に応じた柔軟な対応
生活地域によってゴミ出しルールや災害リスクが異なるため、受け入れ地域の情報を反映した内容にすることが必要です。
実施記録の保存
実施後は、確認書に日時と参加者の署名を記載し、証拠として保存しておきます。
公的手続きの同行支援
手続きが複雑な場合や、初めての届出時は担当者が同行すると安心です。特に、健康保険や年金の手続きは重要です。
理解度に応じた再実施
内容を十分に理解していない場合は、再度説明を行い、繰り返し学習の機会を設けることが望ましいです。
登録支援機関への業務委託も可能
業務負担が大きい場合や、言語対応に不安がある場合は、登録支援機関へ委託するのも効果的です。
- 全支援業務の委託:月額2~3万円
- 生活オリエンテーション単体の委託:1回5万~8万円
委託の可否は、費用対効果や社内リソースの状況を踏まえて判断するのがよいでしょう。
外国人が安心して働ける職場環境づくりを
生活オリエンテーションは、単なる説明会ではなく、外国人が日本社会にスムーズに適応するための大切なプロセスです。内容を丁寧に伝え、不安や誤解を解消することが、長期的な雇用の安定につながります。
企業の負担が大きい場合でも、支援体制を整え、責任を持って取り組むことが求められます。


